飛ばそう、人工衛星!
11月22日。
今から57年前の今日、世界をゆるがす大事件が起きたことを、ごぞんじでしょうか。
アメリカ大統領、ジョン・F・ケネディの暗殺です。
ほんとうは、この日は、もっとすばらしい意味で歴史に残るはずでした。
実はこの日、ケネディ大統領のパレードの映像が、初の人工衛星による日米間中継で日本へ届けられる予定になっていたのです。
しかし、まさにそのパレードの途中で大統領は暗殺されてしまい、記念すべき「世界初」は、大統領暗殺という悲しい出来事を伝えるニュースになってしまったのでした。
現在では、人工衛星は私たちの生活に欠かすことができないものになっています。毎日の天気予報には気象観測衛星からの情報が役立っていますし、スマートフォンやカーナビで自分の位置がわかるのもGPS衛星のおかげです。宇宙ステーションや宇宙ロケットも、人工衛星の一種といえるのです。
■人工衛星のしくみ
というわけで、今日のテーマは人工衛星です。
ごぞんじの通り、人工衛星は地球の周りを回っています。ですが、こんな疑問をいだいたことがある人はいませんか? 「地球には重力があるのだから、人工衛星が重力に引かれて落ちてしまったりしないのか?」と……
その答えは、人工衛星のしくみを知ればわかります。
1)ボールを投げる
まず、地上からボールを投げてみます。
地球の重力(万有引力)に引かれて、ボールは地面に落ちていきますね。
このとき、投げる速度が速ければ速いほど、ボールは遠くへ落ちます。
2)めちゃくちゃ速く投げる
さらにボールの速度を速くしていくと……
やがて、ボールは地球を一周して、元の場所へ戻って来られるようになります。
3)人工衛星完成!
元の場所へ戻ってきたボールは、とうぜん、そのまま2周目に突入します。
2周目が終われば3周目、4周目……いつまでも無限に回り続けます。
これが人工衛星なのです!
言ってみれば、人工衛星は「重力で落ち続けているからこそ、地球の周りを回っている」というわけなのです。
オマケ)第一宇宙速度
では、「めちゃくちゃ速く投げると地球を一周して戻ってくる」という状態にするためには、どれほど速く投げればよいのでしょうか?
このとき必要な最低速度のことを、第一宇宙速度といいます。ちょっと、計算してみましょう。
第一宇宙速度は、次の式で計算されます。
ちょっと、難しいですね。
この式の v が第一宇宙速度。
Gは万有引力定数と呼ばれる数。
Mは地球の質量(kg)で、Rは地球の半径(m)です。
実際に、その値を調べて、式にあてはめてみます。
G = 0.000 000 000 066 7
M = 5 970 000 000 000 000 000 000 000 kg
R = 6 370 000 m
ここから計算すると……
v = 7906.42…
およそ、秒速7900mという値がでてきました。
この速度は、時速に直せば、実に時速28000㎞以上に達します。
とても速いですね。新幹線のざっと90倍近く。
岡山ー大阪間を、25秒もあれば余裕で通り過ぎてしまうことになります。
しかし、この速度ですら、人工衛星を打ち上げるために必要な、最小ギリギリの速度でしかありません。実際に地球の周りを回っている人工衛星は、これよりもっと速いのですから、おどろきです。
宇宙ロケットがあれほど勢いよく噴射しているのも、このような超高速まで加速するためだったんですね!
人工衛星のお話は、いかがでしたでしょうか。上でやってみせたような計算方法は、高校の理科(物理)の授業で習います。興味のわいてきた人は、ぜひ理科や数学・算数をしっかり勉強して、高校で物理を学んでみてください。
きっと、もっともっと興味深いことが、たくさん見つかることでしょう!
岡山校 杉本