今日の読書 「貞観政要」
みなさまに世界の良書を紹介する「今日の読書」のコーナー。
今回は『貞観政要』をご紹介します。
『貞観政要』は、中国唐の時代に成立した政治学の書です。
「貞観」とは唐建国の英雄太宗皇帝の頃の年号で、『貞観政要』は太宗皇帝とその腹心たちの問答集の形式を取っています。
太宗皇帝は中国史上でもトップクラスの名君として有名で、その政治はたいへん優れたものであったといいます。中でもとりわけ注目すべきは、太宗皇帝が「諫言」を強く奨励したことでしょう。
「諫言」とは、「目上の人の悪いところを指摘する」の意。
しかし、絶対権力者たる皇帝が相手では、なかなかそんなことできるものではありません。
そこで太宗皇帝は、諫言しやすいようにさまざまな工夫を凝らしました。思ったことを言いやすいように常に温かな表情を作り、いつも部下を近くの席に座らせて親しく話し、誰かが諫言したときには怒ったりせずきちんと受け止めたのだそうです。
『貞観政要』の中にも、部下からの諫言を受け入れ、自らの行いを改める玄宗皇帝の姿がたびたび描かれています。特に、なんでもかんでもハッキリものを言う腹心魏徴とのやりとりは、まるで先生と生徒の会話のようでほほえましくさえあります。
自分の悪いところを指摘され、その意見をうけとめ、改める。
簡単なことのようですが、なかなかできることではありません。
まして過去に成功を収めたり、自分に自信を持っていたりすればなおさらです。
しかし、広大な中国の皇帝にまで成り上がった男でさえ、他人からの意見にしっかりと耳を傾けました。自分自身を見つめ直し、よりよい政治を行っていくために、です。
受験生のみなさんは、これから先、何度も耳の痛いことを言われて腹を立てることでしょう。
そのとき、少しだけ思い出してみてください。
常に人の声に耳を傾け、自分を正し続けた、謙虚な皇帝がいたことを。
大高校 杉本